モディ政権はなぜヒンディ語の普及に熱心なのでしょうか

PUBLISHED: 2022年10月31日   

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Narendra Modi/Twitter

10月9日付のNew Indian Expressに、アミット・シャー内務大臣が率いる議会の公用語委員会が、国立大学(Central universities, 国会法によって設立された公立大学で、教育省高等教育局の管轄下にある。2022年10月18日現在、55校)を含む高等教育機関の教育媒体をヒンディー語に統一するよう勧告した、という重大ニュースが報じられた。

「国内のすべての技術系・非技術系教育機関において、教育やその他の活動の媒体としてヒンディー語を使用し、英語の使用は任意とすべきである」と報告された。

大胆にも同様に、委員会は政府の登用試験は、現在ヒンディー語と英語の両方で行われているが、英語をやめるべきだと勧告した。「インド政府の機関ではヒンディー語で仕事をすることが義務づけられている」と報告書は主張した。「このような状況下では、職員の選抜時にヒンディー語の知識が必要であることが重要である。したがって、委員会は、職員の選考に際してヒンディー語の知識を確保するよう勧告する」と。

過去からの響き

1960年代、公用語に関する国会の委員会は、連邦政府の公用語としての英語の存続期間を、憲法制定会議で決定された当初の15年から延長する妥協の一端を担った。主にタミルナドゥ州を中心とした広範からの扇動を受けて英語は維持されたが、ヒンディー語話者への譲歩として、委員会は政府部門におけるヒンディー語の使用を推進し続けることになった。連邦内務省に設立された委員会は、20人の下院議員と10人の上院議員から成り、「連邦の公的目的におけるヒンディー語の使用に関する進捗状況を確認する」とされた。1960年代と同様、今日の首都デリーからのヒンディー語押しは、南部の州を怒らせてもいる。タミル・ナードゥ州の州首相は、委員会の勧告を「言語戦争」の始まりだとあからさまに表現した。

BJPの選挙対策

タミル・ナードゥ州などでの強い反発を考えたときに、BJPがヒンディー語を強く押す理由は何だろうか。その答えは、票とイデオロギーと雇用の中にあると思われる。BJPは、モディ時代に拡大した後も、その強さの中心をヒンディー語帯に持つ政党である。2109年の下院選挙では、BJP(別称サフラン党、ナショナリストを象徴するサフラン色)はヒンディーベルトから60%近い議席を獲得した。偏りは、インドの現代史において特異なことではない。かつての最盛期では、国民会議派もヒンディーベルトを中核としていた(ただし、その地理的広がりはBJPよりも比較的バランスが取れていた)。ヒンディー語地帯の広さと政治的・文化的連続性の意味するところは、ある政党が中央で優勢になるためには、インド連邦のヒンディー語話者の間で人気がなければならないことだ。したがって、以前の国民会議派と同様、BJPは強い動機を持ってヒンディー語がインド政治の中心であり続けるよう後押しする(第一:選挙)。

この選挙的な要因をBJPのヒンドゥー至上主義に加えると、それは統一された、単一言語を国家形成の必要条件とするヨーロッパ型の国家を想定する。実際、独立当初のヒンドゥー至上主義のよく知られたスローガンの1つは「ヒンディー(言語)、ヒンドゥー(宗教)、ヒンドスタン(国家)」であった(第二:イデオロギー)。

雇用の獲得

第三の要因は、しかし、最も強力かもしれない。言語アイデンティティ確立の推進は、インドの文脈では、単なるアイデンティティ・ポリティクス(特定のアイデンティティ(人種、国籍、宗教、性別、性的指向、社会的背景、社会階級、その他)に基づいて政治課題化と解決を展開する政治手法)の劇場ではなく、職をめぐる駆け引きなのである。言語は、試験や教育、職場の文書言語を通じ、コミュニティを包含もし、排除もする強力な手段である(第三:雇用)。

この争いは、憲法制定議会で初めて見られ、ヒンディー語を国語として推し進めようとした。この動きはそれまで英国による統治の官僚制度を支配してきた沿岸諸州の政治家たちを憂慮させた。歴史家のジョヤ・チャテルジーが言うように、「政府の言語としての英語への攻撃は、ベンガルのバドラロック(英国統治時代のベンガル紳士)がまだ持っていたような、かなり消耗した武器庫に残っている数少ない武器の一つを脅かした」のである。憲法制定議会は最終的にヒンディー語と英語の両方を公用語として維持することを決定したが、これは憲法制定議会でヒンディー語を話さない人々に警戒を出していた結果を遅らせることにしかならなかった。2018年には、例えば、中央政府の公務員候補者の60%がヒンディー語話者であり、沿岸州が上層部の官僚を支配していた1947年とは驚くべき変化であった。

ヒンディー語のアドバンテージ

これだけが例ではありません。公的試験でヒンディー語に与えられた特別な地位は、ヒンディー語話者に大きなアドバンテージになっていおり、非ヒンディー語州の出身者には極めて稀な機会となっている。連邦政府のB・C群の公務員を対象とした合同大学院レベル試験は、ヒンディー語と英語のみで実施される。毎年、試験は何百万人ものインド人が受けるが、ヒンディー語話者だけが母国語で受験でき、他の州の受験者にはない有利な条件となっている。

BJPが政府の仕事や教育機関でヒンディー語をさらに増やそうとしているのは、この傾向をさらに強め、ヒンディー語を話さない人を有利な政府の仕事から締め出し、ヒンディー語を話す人に有利な道を作ろうとしているのである。

なぜこのようなことが今起こっているのでしょうか。その理由の一つは、2024年の下院議員選挙が近づいているという要素である。同じように重要なのは、ヒンディー語圏の悲惨な雇用状況だ。雇用暴動で年が明けたウッタルプラデシュ州とビハール州では、怒った若者たちが列車を襲い、火を放つという事件が起きた。その後10月には、ウッタルプラデシュ州で行われた州政府の試験で、受験者数が370万人に達し、列車があふれたことが話題になった。ありえないほどに満員の台車や駅のバズり画像がインターネット上に出回った。

受験者で混雑する車内

モディ政権が推進するヒンディー語の普及が生み出す雇用の数はわずかなものでしょう。実際、2024年の選挙までに一人も生まれないかもしれない。しかし、モディ政権は、ヒンディー語の州で怒っている若者たちに希望の光を与える手助けができることを期待しているだろう。残念ながら、BJPのヒンディー推進は同時に南部の諸州を怒らせるだろうし、南部の州首相たちはすでに、中央政府の仕事において自分たちの言語もヒンディー語と同等に扱われるよう要求し始めているのだ。しかしながら、少なくともBJPの選挙の見通しについては、2024年にサフラン党がヒンディー語地帯での地位を維持することに比べれば、その有用性は限られたものである。